ホンダが中国で発売する電動カブはカブe:と名付けられたEB(Electric Bicycle=電動自転車)で、最高速が25km/h以下と自転車並みのスペック。
だが、元々カブは1952年に発売された自転車用補助エンジンからスタートしており、電動化で原点回帰した形だ。
実は、カブe:が発表される前に、ホンダは電動カブのコンセプトモデルを2回に渡り提案しており、今回3度目の正直で製品化が実現している。
最初は2009年の東京モーターショーに出品されたEVカブで、電動ならではの強味を生かした前後2輪駆動の野心作だった。
次は2015年の東京モーターショーにEVカブコンセプトを出品。
こちらはスーパーカブC125のコンセプトモデルと同時発表され、ともに2018年のスーパーカブ誕生60周年に市販される予定だったが、EVカブはバッテリーのサイズなどの問題で市販に至らなかった。
これらを経てスーパーカブ誕生65周年の2023年に中国でカブe:が発売される。
スーパーカブの条件として受け継がれている大径17インチホイールやアンダーボーンフレーム、レッグシールドなどがきっちり盛り込まれており、今度は電動でも人々の生活を豊かにしていくだろう。
Cub e: [HONDA] 1958年登場のスーパーカブは、2009年と2015年の東京モーターショーでEV仕様が出品されたが市販されず。
今回が初の電動カブだ。
価格は5999元(約11万7000円)だ。
カブe:のカラーバリエーションは灰、白、ベージュ、赤の4色。
日本のスーパーカブ50のベージュとカラーを一致させているが、灰と赤はカブe:のみのカラーだ。
カブF型(1952年) [HONDA] 初のカブシリーズは自転車の補助エンジンとして発売された。
2ストローク50ccエンジンの最高出力は1PSなので、定格出力0.54PSのカブe:と走りは同等かも。
EV-Cub [HONDA] 最初の電動カブの提案は2009年のコンセプトモデル。
前後輪にインホイールモーターを採用した2輪駆動方式でアルミダイキャストフレームの中央にバッテリーを収めていた。
EV-Cub Concept [HONDA] 2009年のコンセプトモデルからより現実的なパッケージに進化。
バッテリーは着脱可能で充電のしやすさも配慮され、当時の八郷社長は市販を宣言していたのだ。
CUV ES [HONDA] 実はカブならぬ電動CUVが1994年にディオベースでリース販売されていた。
定格出力0.58kWで1充電61kmの航続距離だった。
電動カブがホンダの悲願だったことを示唆するネーミングだ。
アンダーボーンフレームとすることでバッテリー容量に制約あり
カブe:は、同時発表されたズーマーe:やダックスe:とは車体パッケージが大きく異なる。
まず、前後17インチホイールはスーパーカブの伝統でこれをきっちり踏襲。
一方、アンダーボーンフレームに収納されたバッテリーは24Ah→20Ahに容量が落とされている。
航続距離もズーマーe:の90km、ダックスe:の80よりも少ない65kmとなるが、バッテリー重量は6.5kgとダックスe:よりも2.4kg軽量だ。
また、定格トルクは3車で最大の16Nmを発揮し定格出力もダックスe:と同じ0.4kWとなっている。
ちなみに車重は最軽量の53.5kgだ。
使い勝手はダックスe:と共通で、施錠と開錠はNFCカードや4G通信、ブルートゥースを利用する方式だ。
また、ダックスe:と同様にGPSによる車両の駐車位置検索やスマホに警告が届く盗難抑止アラームにも対応している。
LEDヘッドライトやウインカーは、ダックスe:と同じ丸形とし、ハンドルカバーなどスーパーカブのスタイルを踏襲している。
短くカットされたリアまわりのスタイルはスーパーカブシリーズと大きく異なる。
テールランプはテールカウル上にハイマウントされている。
スーパーカブと同じ17インチホイールでタイヤサイズも近い。
ダックスe:やズーマーe:の10インチとはライディングフィールが異なるだろう。
フロントはディスクブレーキを採用。
スーパーカブシリーズも110ccモデルが2022年にディスクブレーキ化されたばかり。
リアまわりのスタイルがスーパーカブと大きく異なるのに伴ってリア1本サスですっきりした見た目になっている。
三角形のシートはスーパーカブの定番。
通常ならシートの下に燃料タンクがあるが、カブe:のバッテリーは足元に収納されている。
バッテリーは着脱式の48V/20Ah。
ダックスe:やズーマーe:の48V/24Ahよりも容量は小さい。
車載したままでも充電できるようにシートの手前にコネクター接続口を備えている。
駆動はインホイールモーターとペダル式を採用。
BOSCH製を採用するダックスe:やズーマーe:と異なりモーターは現地のホンダ製で、リアはドラムブレーキとなっている。
メーターはフル液晶表示で、時計や電池残量を大きく表示。
Bluetoothやクルーズコントロールのインジケーターも表示される。
切手大のNFCカード(右上)やスマホのNFC機能(右下)、スマホのBluetooth(左)の他、スマホの4G通信でも施錠や開錠ができる。
余談になるが、本田宗一郎氏と藤沢武夫氏がスーパーカブを開発する際に欧州を視察し、これらの開発要件を定めたとされる。
カブe:にも受け継がれる伝統だ。
カブe:中国仕様主要諸元
・全長×全幅×全高:1839×710×1066mm
・ホイールベース:1235mm
・車重:53.5kg
・モーター:永久磁石
・定格出力:0.40kW
・定格トルク:16Nm
・バッテリー種類:リチウムイオン
・バッテリー電圧/容量:48V/20Ah
・1充電走行距離:65q
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=70/90-17、R=70/90-17
・価格:5999元(約11万7000円)※日本国内導入予定なし
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